仕事では、異動したり、新人を研修したり。家庭やプライベートでは、子供が進級・進学したり、趣味の教室に通ったり。人の動きが活発化する新年度は、男も女も大変だ。実は、夫婦の溝を深める時期でもある――。
結婚・離婚カウンセラーの山崎世美子氏が言う。
「4月は、仕事をしている人も主婦も、環境が変わるため、バタバタします。そうすると、新しい人間関係や物事に注意が集中するため、親しい関係の人への配慮や気配りがおろそかになる。だから、4月は夫婦やカップルに溝が生まれ、それが深まりやすいのです」
伊藤さん(47)は、同い年の妻と結婚して8年になる。夫婦共働きだ。3年前の3月末、お互いの会社から30分ほどのところにマンションを買い、引っ越 した。挨拶した隣の人に「奥さま、キレイですね」と言われると、「いやいや、そんなことなく、ガサツで」と返して部屋へ。
その直後、「『ありがとうございます』でいいでしょ。なんでわざわざ否定した揚げ句、『ガサツで』なんてダメ押しするのよ」と妻がブチ切れた。伊藤さんは、初対面の人に照れて謙遜したつもりと説明したが、妻の怒りは週末ずっとおさまらなかった。
■9割の妻が夫の何げない一言にイライラ
月曜日からは、引き継ぎや新しい仕事の打ち合わせでテンテコ舞い。夜は連夜の歓送迎会。1週間ぶりに食卓を囲んだ土曜の昼だった。
「こんなに食えないよ」と伊藤さん。「飲み過ぎは、自分のせいでしょ」と妻に言われてカチン。「部長に勧められた酒を断るわけにはいかない。仕事なんだ」 と言い返すと、「だったら、自分で注ぐ量を調節すればいいじゃない。『こんなに』と言うけれど、食事の量はいつもと同じ。それが食べられないほど飲むのが 悪いのよ」と、お互いの怒りが出るわ、出るわ。
「太るのが嫌なら、ポテチと揚げ物をやめなさいよ」と吐き捨てられ、朝食は一切作ってもらえなくなった。
GWの旅行計画は、今ぐらいに始まる。伊藤さんは、妻の機嫌を取ろうと、ある日、旅行の話を向けたが、だんだん面倒くさくなり、何日かたったとき、妻の提案に何げなく「どっちでもいい」と返事してドツボに……。
「女性がキレやすい2大要素は、食事と容姿。男性の言葉がシャレだとしても、この2つに関しては通じにくい。女性がテンパっているこの時期はなおさらで、 男性も新年度のストレスで、ちょっとした妻の怒りをかわす余裕がなく、売り言葉に買い言葉になりやすいのです。もうひとつは、男性の対応がおろそかなと
き。親の介護や子供の教育、転職などは、男性が思う以上に女性にとっての一大事。完璧にこなそうと、この時期の女性は神経質になっています」
妻のグチを真面目に受け止めてやる必要があるのだ。
厚労省の月別離婚データによると、離婚が最も多いのは3月、それに続くのが4月だ。そして、妻は9割が夫の何げない一言にイライラしているという。この時期に限っては、親しき仲にも礼儀あり、だ。
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